女子大生の読書日記

ゆるっと、本の話を気まぐれに

救われた話

どんな感情も抱きしめるということ

今日は2020年に私がどんな本をよんで、どんな風に暮らし、どのように感じたかについて書き記したいと思います。この一年、私は何度も本に救われました。本との出会いがなければ、ここまでやってこられませんでした。特に、村田沙耶香さん、西加奈子さんの物語に救われました。

私にとっての村田沙耶香さん

村田さんの作品は、私にとって現実世界からの避難所でした。私は、自分の性に向き合うことがものすごく苦しかった時期があったのですが(今後も向き合い続ける必要がある)、彼女の物語は苦しみや葛藤を忘れさせてくれる力があります。そして、その苦しみの原因や気づきを与えてくれたのも村田さんの物語です。『ハコブネ』の中にこんな言葉があります。

「この性が辛いです。性的な目で見られたり、顔や身体で価値を判断されたり。何気ないことでも女性らしさを求められたりするのも、息苦しいし」

「だから、それは皆、そうよ。あなたのやっていること、子供と同じ」(p106)

ハコブネ (集英社文庫)

いっそ自分の性や性欲といったものを捨ててしまいたい、煩わしいと思っていた私にとってこの言葉は鋭く突き刺さり、痛かった。けれど、この苦しみや痛みから逃げることはできないのだと、性に真摯に向き合うことを諦めてはいけないと気づかされました。このブロブの名前には、あえて「女子大生」というような明記をしています。そこには、男性の大学生には男子大学生という表記はしないけれど、それが女性になると女子大生と記述されることが、当たり前になっている社会(構造的に作られてしまった)への私なりの抵抗を示しています。私は、些細なことだと思われてしまうものに対しても、感じ取ってしまいます。そんな小さなことまで気にするなんて面倒くさいと思う人もいるかもしれませんが、私は自分が感じた気づきや苦しみから逃げずに向き合っていきたい。

 

私にとっての西加奈子さん

西さんは私にとって、神様みたいな存在です。私は今年、これまでの人生の一冊と言って良いほどの本との出会いました。それが『i』という作品です。

 

i (ポプラ文庫)

i (ポプラ文庫)

 

「この世界にアイは存在しません。」入学式の翌日、数学教師は言った。ひとりだけ、え、と声を出した。ワイルド曽田アイ。その言葉は、アイに衝撃を与え、彼女の胸に居座り続けることになる。ある「奇跡」が起こるまでは―。

9月の頭にこの本に出会ったのですが、その時の私といったら、死にそうになりながら生きてるような状態でした。夏休み中で、コンビニ人間への憧れから、初めてコンビニバイトの面接に行ってみたものの、まんまと落とされ(ウイルスにより私の今後の予定がはっきりしていなかったのが理由だと思う)、外部と接触することのない鬱々とした生活をしていました。その期間中、あるニュースを見て、苦しくて一人でボロボロ泣きました。私の周囲の人はそれに対して、心ない言葉を投げかけていたので、私は一人で苦しかった。そこから2ヶ月弱、ニュースをなるべく見ないようにしていたし、投げやりな気持ちで過ごしていたような気がします。そして、後期の授業が再会する直前に偶然にも一人部屋に引きこもり『i』を読みました。『i』を読んだ後、しばらくずっとその物語の渦に吸い込まれているような体験をしました。

『i』は私にとって、本当に大切な一冊です。他者を思うこと、想像力は無駄にならないということ。自分の苦しみを、苦しんで良いのだと、苦しみさえも愛して良いのだと教えてくれました。そして、主人公のアイと同じように考えすぎる私は、考えすぎる私のままで良いのだと、この物語は私の痛みを癒してくれました。私はこの物語をずっと、抱えて共に生きていくのだと思います。

『i』の中に、『テヘランでロリータを読む』という本が登場します。その本を読み終えてから、『i』をもう一度読んで、紹介できたらいいなあと考えています。

 

2021

2020年、私は自分自身に向き合い続けて、どんな感情にも逃げない強さを持つことができたように思います。また、西さんとの出会いは、海外文学への扉を開いてくれたように思っています。今年は、世界史を学び、特に海外文学を読み進めていきたいです。

そして、私の言葉で、決して偽ることなく、真っ直ぐに書いていきます。

 

読んでくだっさた方、ありがとう。

今年もよろしくお願いします。

 

 

 

『推し、燃ゆ』宇佐見りん(ネタバレなし感想)

「違い」を分かることの難しさ

推し、燃ゆ

腹が立った。なんでこんな不安定なものに依存するの?自分主体で熱中できるものがないと主人公であるあかりは壊れてしまう。彼女の推すアイドル、上野真幸を推し続けるなんて、なんて不健康なのか。

一度読んだだけでは、私はその感情のままでいたと思う。私がこの「推し、燃ゆ」を読んでまず一番に思ったのは、「違い」を分かることは、簡単に語られるべきではない、とても難しいことであるということであった。「違い」を認め合おうだとか、「多様性」があっていいだとか、最近世間では口を揃えてそんな風に言っている。でもそれは単なるキャッチコピーに過ぎないんだろうなと感じることがある。あかりは小学校の時に漢字を何度も練習しても、覚えられなかったり、高校生になって居酒屋でバイトをする時に、いつもと違う空気感になった時に(急に店が忙しくなったなど)、手間取ってしまう。みんなが「当たり前に」できることが出来ない。世界は優しくない。そんな風に日常をとらえている彼女は、「推し」のために生きている。彼女の原動力は全て「推し」という存在なのだ。私が彼女のことを不健康であると言ったように、あかり自身もそう世間から思われていることは分かっている。でもそれを踏まえた上で、あかりは「推し」を推し続けるのだ。この本の中には、「推し」の全てが詰まっている。彼女が「推し」をとてつもないパワーで推し続けるから、アイドル(特にCDを買って握手券がついてくるような)の推しをしていない読者は、あかりの熱量に終盤に差し掛かるにつれ、冷めていってしまう気もするのだ。実際の私もそうだった。それでもこの作品が自分の中にひっかかるのは、「今」のこの状況がそれぞれのシーンに込められているからだと思う。ただぼうっとしているのにはどこか罪悪感があったり、無理をして働いたり、勉強することが求められたり、現代人ならどこかで感じたことのある息苦しさを感じるのだと思う。作者の宇佐見さんは私と年齢が近いことから、リアルだなあと思った所もたくさんあった。(インスタライブの描写だったり、赤いビックリマークだったり)

人は自分のためだけには生きられない時がくることを最近になって、だんだん分かるようになってきた。あかりにとっては「推し」という存在がいるからやっていけるということなのだ。もう「推し」を推すことは不健康だと、彼女に面と向かって言うことは無さそうだ。

私も、部活やめたんだよ

桐島、部活やめるってよ』※ネタバレなし

 「私も、部活やめたんだよ」なんて言っといて、「桐島、部活やめるってよということは、桐島が部活をやめるかどうかはまだ分からないということになる。だから、私「も」というのは厳密に言うと、「は」と表記しないといけない。『桐島、部活やめるってよこのタイトルはあまりにも有名である。普段、読書をしない私の家族も知っていた。先日、朝井リョウさんのエッセイ『時をかけるゆとり』『風と共にゆとりぬ』にどハマりしてしまった私は、毎日のように家族の前で朝井リョウ朝井リョウと連呼していたわけだ。朝井さんのエッセイの面白さを一言で表すとしたら、全国民が手を取り合って絶賛できる面白さである。そして、朝井エッセイロスに陥った私は、高橋みなみさんと朝井さんの「ヨブンのこと」を聞き始めた。これがまた面白い。完全にハマってしまった。勝手に自分の中でチームYになったつもりでいる。それだけ、朝井リョウに対する熱が高まっている今日この頃である。

 

時をかけるゆとり (文春文庫)

時をかけるゆとり (文春文庫)

 

 

 

風と共にゆとりぬ (文春文庫)

風と共にゆとりぬ (文春文庫)

 

 ↑全国民が手を取り合って絶賛できる朝井さんのエッセイ

 

 黒い青春

 私は半年前に高校を卒業した。まだ半年なのだが、随分と時が経ってしまったように感じることの方が多い。道端で制服を着た高校生を横目で見ると、自分が半年前まで高校生だったのかと信じられない気持ちになる。私はとにかく早く卒業したかった。担任とは、根本的に人間として合わないと思っていたし(後に出てくる顧問と同一人物である)、先に推薦入試で進路が決まった私は、受験シーズンに教室で過ごす時間がとてつもなく居心地が悪かった。だけど唯一、高校生活を生き抜いてよかったと自信を持って言えることがある。この物語の中に、登場人物が上辺だけではない友達が欲しいと願うシーンがあった。私は生涯付き合えると自信を持って言うことのできる友人に一人出会うことができた。それが、私にとっては救いであったし、その高校に進学し、卒業できてよかったと思える出来事であった。この物語の中には、外見ばかりを気にする者、熱心に打ち込むものはあるが、教室では疎外感を抱いたりする者、色んな高校生の視点を見ることができる。誰を上に見て、下に見るか。そんな経験は、誰もがしたことがあるのではないか。私は当時、生徒を以下四つに分類していた。

①常識のないキャピキャピ ②常識のあるキャピキャピ ③良くも悪くも、普通 ④基本的に喋らない

改めて、文章にして見ると凄く嫌なやつだなと我ながら思う。そもそも常識があるないについても完全なる主観に基づいている。勿論、口に出してあなたは、常識のないキャピキャピね、なんて言うことはまずない。ただ心の中で密かに分類していたのである。学校というものは、本人たちが思っている以上におかしな場所なのかもしれない。どれだけ私自身が自分を客観視できているかどうかは微妙であるが、私は③の人間であった。②、④とは基本的に仲良くできる。しかし、①の人とは、一対一でコミュニケーションをとる場合は辛うじて、何とかなると言った感じで、複数人となるとそれは一気に崩れ落ちるのである。このような、心にざらりとした後味を読んで感じるのがまさに『桐島、部活やめるってよ』である。

 正解も不正解も存在しないということを前提にした上で、私は部活を辞めて正解だったかと改めて考えてみると、辞めてよかったと思っている。嫌な思いを沢山してもなお、あの部活から逃げ出せたことはよかったかも知れない。(やめた原因はいくつかあるのだが、大部分は人間関係にあった)部活に限らず、苦しいことがあったら、逃げ出してしまうのも一つの選択である。周りから、どう言われよう思われようと、逃げてしまえば、解決することも沢山あるのだから。実際、やめる時は本当に苦労したのである。大っ嫌いな顧問が先輩たちに「絶対に連れ戻せ」というような指示を出し、顧問の言うことは絶対!と信じていた先輩は本当にしつこかった。それから私は部活をやめてから、吹奏楽が呪いのようなものになっていた。しかし、どういうわけか大学の吹奏楽団に入団してしまった。あれほど、嫌な記憶だってあるはずなのに。私は、他の誰かを傍観しているような気持ちになった。あなた吹奏楽、またやるのかい?思わず自分に対して笑いが込み上げてきた。絶対にやらないと思っていたのに。体の奥底には、音楽が好きな気持ちや大勢で演奏することをまた体感したいと思い続けていたのであろう。その先のその場所で上手くいくかどうかなんて分からないけれど、こんな風に気楽でいられるのは、高校時代に真っ黒な思いをしたおかげかもしれない。

 もし、目の前で辛い思いをしている中高生が居たとして私が伝えられることは、辛い時には逃げることも大切で、いつか時間が解決してくれるから大丈夫。誰にも打ち明けることの出来ない思いは、本が受け止めてくれる。桐島、部活やめるってよ』にはそんなリアルな高校生たちがいるのだから。

 

ということで「私、高校で部活やめたけど、大学でまた吹奏楽やるってよ」しばらく、私の中で「〇〇ってよ」が流行りそうな予感がする。

 

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

 

 

 

 

上半期に出会ったお気に入りの5冊

2020年上半期 心躍る、出会い

今回は私が2020年上半期に読んで良かった本を紹介します。どの5冊も私にとって、とても大切であり、順位をつけることはできないので、読んだ順に振り返ります。簡潔に、かなり主観的な紹介になってしまいますが、少しでも興味や共感持っていただけると嬉しいです!

 

一月六日 瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』

そして、バトンは渡された (文春e-book)

一言「森宮さんが好き」

パッと思いつく限り、ここ最近で一番好きな小説の中のキャラクターが森宮さん。森宮さんは、優子ちゃんの五人の親の内のひとりです。すごく一生懸命で、その向き合い方や森宮さんの言葉がとにかく好き。また、家族はこうであらねば、これが普通だ、というような考え方から自然と逃げ出して、ほくほくとした幸福感に正月早々浸ったなぁというような思い出があります。この小説の中には、料理がたくさん出てくるのですが、思わず読んだその日に餃子を作りました。好きな小説を思い浮かべながら、ご飯を食べることができるのってとても幸せですよね。

 

一月二十一日 平岡陽明 『ロス男』

ロス男

一言「じわじわ感動」

読了後、二日、三日と経つにつれてなぜか、じわじわ感動するという不思議な体験をしました。この小説の主人公と私の共通点など全くないのです。主人公は、ロスジェネと呼ばれる1990年代後半〜2000年代初頭の就職氷河期に社会に出た世代のフリーライターの男性。そして、何か大きなどんでん返しだったり、大きな展開がある訳でもないのです。それなのに、じわじわ感動してしまう。このじわじわは一体どこから?ぜひ、このじわじわ感動を体験してみてはどうでしょうか。

 

二月十九日  村田沙耶香『消滅世界』

消滅世界 (河出文庫)

一言「な、なんだこれは‥!」

村田沙耶香さんとの運命的な出会い。足元がぐらぐらする、どうしよう。私は読了後、放心状態になっていたと思います。この世界では、夫婦間での性行為が禁止され、家族と恋愛(性欲)が切り離されいくのです。性欲とは社会に作られたものなのではと考えこんでしまうほど、現実と非現実の境目が分からなくなっていきます。『コンビニ人間』が嫌いではない、どちらかと言うと好きかな、好き、という方にぜひ読んで欲しい一冊です。

 

四月十八日 村田沙耶香『生命式』

生命式

一言「ふわふわする」

道端のたんぽぽを見る度、飼い犬を見る度にドキッとする。そして、一冊読み終える頃には、宙を漂っているような、足が地に着かないような、今までに体験したことのない読後感でした。私の体にとりついているしがらみを丁寧に、取り除かれたような感覚になるのです。また、初めて短編集の良さに気づけた作品でもあります。

librarynisumitai.hatenablog.com

 

五月二十四日 村田沙耶香『となりの脳世界』

となりの脳世界

一言「え!って何回言ったかな」

こちらは村田さんの脳の中身を覗くことのできる、たいそう貴重なエッセイでございます。よく、村田さんの小説を読んだ方が「この方はどんな方なのか(怯えながら)」また、「彼女は怒っている」等々の書き込みを見ることがあるのですが、そんな時、私は画面に向かいながら、「そんなことはないのです!彼女は可愛くて仕方ないのです!」と全力で誰に届くはずもなく心の中で呟くのです。またこのエッセイは「え!」の連続です。こそそめスープって何?歯ブラシの岩崎さんって誰?ほらほら気になってきたでしょう?小説が合わなかった人も、まだ村田さんを知らない人も彼女の頭の中を覗いてみてはいかがでしょうか。

 

まとめ

今回は上半期に出会ったお気に入りの5冊を私の記憶や読後感を中心に紹介してみました。5冊中3冊、村田沙耶香さんという何とも偏りのある結果になりました。それだけ、村田さんとの出会いは衝撃的であり、運命のようなものだと思っております。2020年の下半期、これからまた新たな本との出会いを楽しみに、日々淡々と過ごしていきたいと思います。

 

最後まで、お付き合い頂きありがとうございます。皆様に素敵な本との出会いがありますように。

 

 

 

 

【紹介】『わたしの美しい庭』凪良ゆう

【紹介】『わたしの美しい庭』凪良ゆう

お久しぶりです、カナです!大学の授業も始まって、割と忙しくなってきたので(それでも読書はかなりできているので毎日充実しています笑)なかなか更新できていませんでした。今日は凪良ゆうさんの『わたしの美しい庭』をネタバレなしで紹介して行きたいと思います。

わたしの美しい庭

あらすじ

小学生の百音(もね)は統理(とうり)とふたり暮らしだが、血はつながっていない。朝になると同じマンションに住む路有(ろう)が遊びにきて、三人でご飯を食べる。その生活を”変わってる”という人もいるけれど、日々楽しく過ごしている。

三人が住むマンションの屋上には小さな神社があり、地元の人からは『屋上神社』などと呼ばれている。断ち物の神さまが祀られていて、悪いご縁を断ち切ってくれるといい、”いろんなもの”が心に絡んでしまった人がやってくるがーー

構成

  • わたしの美しい庭 I
  • あの稲妻‥独身女性のお話
  • ロンダリング‥ゲイである路有のお話
  • 兄の恋人‥うつ病を患う男性のお話
  • わたしの美しい庭 II

現実と誠実に向き合っていく人々の爽やかな連作短編集です。

書影のイメージでファンタジーなのかな、と思われる方がいるかもしれませんが日常を描いた作品です。

 

おすすめの人

  • 生きることが苦しいと感じている人、心が疲れている人
  • 本当の”優しさ”ってなんだろう?と疑問に思っている人
  • 爽やかで、温かい小説(後味の良い)を読みたい人、または好きな人

と言えども、生きる全ての人におすすめです

 

わたしが特におすすめしたいのは、、

  • 中高生
  • お子さんを持つ親御さんです

私が高校生の時に出会っていたら、もっと響いていたかもなという個人的な思いと、統理の百音に対する姿勢がとても素敵なので、子育てをされている方にもぜひ読んで欲しいなと思いました。

 

『流浪の月』と比べてみると

私、個人の感想でいうと『わたしの美しい庭』の爽やかな読後感がとても好きです。『流浪の月』は夜に雨がしとしと降っているのを途方もなく傍観している感じですが『わたしの美しい庭』は明るい太陽の光を全身で享受するような感じです。夏のお話なので、これからの時期に読むのにぴったりだと思います。

 

感想

生きていると、どうしても自分だけが苦しい思いをしているのではないかと高校生だった頃のわたしは悩み続けていました。そんな時、わたしを救ってくれたのは沢山の本と一人の友人でした。本の中の世界に没頭して多くの人の悩みを体験することで、なんとか自分を保っていました。そして心の内を素直に話すことができるその友人と出会えなければ、わたしの心は死んでいたのかもしれません。こうして、やっとわたし自身が俯瞰して物事を見ることができるようになったのは、自分の悩みからなんとか逃げないで向き合うことができたのと時の経過があったからだと思っています。わたし達は一人では生きていけない。どうしても辛くて逃げ出したい時、誰かにその悩みを打ち明けられたら一番良い。でも、それができない時も必ずある。そんな時にこの本は優しく寄り添い、あなたの相談相手になってくれると思います。

失うことや持ってないことで得られるものもあるんだ(p 270)

 

 

 

 

 

みなさんに心躍る、本との出会いがありますように。

 

 

 

 

カナ(女子大生による読書日記)

 

 

【紹介】村田沙耶香著『生命式』本当に危険な短編集!

これは本当に危険な短編集

こんにちは、カナです!

今日紹介するのは、4月中に読了した小説7作品の内、my best本になった、

 

村田沙耶香さんの『生命式』を紹介します!

 

帯には、文学史上、最も危険な短編集”と記述されていますが、村田さんの脳の中身に少しずつ順応してきた私にとっては、「最も危険とか、言い過ぎでしょ。まあ大丈夫、楽しみ〜♪」という面持ちで読んでいったわけですが、、、、

 

 

本当に危険でした!(帯に喧嘩売ってごめんなさい。)

 

読了後、2、3日はフワフワしてしまい、道端で蒲公英を見ては、愛犬を撫でては、「生命式」を思い出す毎日。

気持ちよく、あてもなく、空気を漂ってしまう読後感でした。

 

 

「生命式」には全12篇の短編集が収録されています。中には2、3ページの短さのものもあります。12篇も詰め込む必要はあったのか…読んでいる最中はそう思いましたが、読み終えてみると、12篇あるからこそ、危険な感じを思う存分味わえるのでは、と思いましたので、大満足の短編集でした。また、深読みをしていくと、ゾッとしてしまうものも多くありました。

生命式

 

 

表題作「生命式」とは

12篇の内、私が特に好きだったものは、「生命式」「素敵な素材」「素晴らしい食卓」「孵化」の4作品。その中で、表題作の「生命式」を今回は紹介して行きたいと思います。

 

生命式とは、死んだ人間を食べながら、男女が受精相手を探し、相手を見つけたら二人で式から退場してどこかで受精を行うというものだ。(p12、13)

 

ざっくり紹介すると、死んだ人間の肉を食べて、そこで出会った人が受精をするという

明るいお葬です。

人肉というとなんともグロテスクなものを想像しますよね。しかいここは、村田沙耶香さん。調理の過程も出来上がった料理も本当に美味しそうなんです。私は本気で食べたいと思ってしまいました。

 

じゅわっと、中から肉汁がしみ出す。団子にかけた柚子の果汁の酸味と、大根おろしの食感と共に、牛や豚より少し濃い、けれど猪ほど臭みのない、まろやかで濃い肉の味のする団子がほぐれていく。(p38)

 

 

冒頭は嫌悪感を抱くものの、1篇読み終えればこの通り。ペロリと平らげてしまうような短編集です。

 

正常とは一体何なのか…固定観念にがんじがらめになっている人こそ、この短編集は救いになるのかもしれません。

また、2009年から2018という幅広い期間に雑誌掲載された12篇であるので、様々な村田ワールドを楽しめるのもこの本の魅力です。

 

 

 気になった方はぜひ手にとってみてくださいね!

 

 

 

最後までご覧いただき、ありがとうございます。

 

 

 

 

 

皆様に素敵な本との出会いがありますように。

 

 

 

 

 

【紹介】バズる文章教室 三宅香帆著

表紙はゆるいが中身は…!?

こんにちは、カナです。

今日紹介するのは、書評ライターである三宅香帆さんの

文芸オタクの私が教えるバズる文章教室です!

 

この本は文章の書き方講座というより、”自分がなんでこの作家さんの文章が好きなのか”の謎解き本であると思いました!

 

私は書店で手に取り、中身に少し目を通して購入しました。見た目はゆるい!しかし、読了してみると中身は盛りだくさん!という印象でした。

 

 

文芸オタクの私が教える バズる文章教室

文芸オタクの私が教える バズる文章教室

  • 作者:三宅香帆
  • 発売日: 2019/06/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

内容

バズるつかみ、バズる文体、バズる組み立て、バズる言葉選びの4章で構成されています。

小説、エッセイ、ブログ、CM、ビジネス書などなど様々なジャンルの引用とともに、どこにバズる秘密があるか簡潔に紹介されています。

 

バズる、バズる、バズる、バズる…感覚としてなんだか違和感を覚えます。もちろん、多くの人に読んでもらえるのが良いことも分かります。でも、バズるためだけに文章を書くわけではありませんよね。

 

そう思ってしまった人もこの本は満足度が高いと思います。内容が濃いからです!見た目に騙されないでくださいね(笑)

 

この本のベストな楽しみ方ランキング

  1. ”自分がなぜこの作家さんの文章が好きなのか”と謎を解く
  2. 好きな文章を見つける
  3. 文章の書き方を学ぶ

 

私は綿矢りささんの文章がとても好きなのですが、なぜ好きなのかがこの本を読んで解明しました。 そして、引用されている文章を読んで、この続きが読みたい!と思ったものもありました。

 

ただ、いざ自分が書き手になって真似ができるかと問われると、うーん難しい、、と思ってしまったので、この本は謎解き本と位置付けるのがよいと思いました。

 

 

 

小説好きにはハマる本なのでは?気になった方はぜひチェックしてみてくださいね!

 

 

 

 

 

 

それでは、みなさんに素敵な本との出会いがありますように。